春の奥羽路Fleche。笑顔が絶えないメンバーと共に過ごした24時間、360kmの旅。

お誘いを受けて久々のFlecheへの参加。さてどうなるか!?

今回お誘いを受けまして、AJ北海道が主催するFlecheに参加することが出来ました。Flecheは過去に一度、ブルベを初めて間もない頃にオダックス近畿が開催する京都がナイスプレスとなっているものに参加したことがあるのですが、あの頃はいろいろ心身技術経験足りないものが多過ぎて「なんとかギリギリ走りきった」といったものだったのですが、あれから数年。その後の我が身に蓄積された経験値はいかほどのものか、そのへんを試してみたくもあり「是非とも参加したいです!」とお誘いにほいほいと乗ってみたのでした。(お誘いいただいたアーツさん、チームメンバーの皆様、ありがとうございます。)

 

さて唐突に「Fleche」だの「AJ北海道」「オダックス近畿」「ナイスプレイス」といった用語が飛び出しておりますが、このブログを読まれる方の半数はこうした言葉を理解していると思いますのでそのへんの説明は割愛させていただきつつ「ちょっと意味がわからないよー」といった方で簡単ではありますが補足させていただきます。

 

Flecheはブルベと違って開催時期が決まっています。かつては決まっていなかったり、決まっていたり、いろいろ動きがあるそうですが、故事に習ったイベントだそうであり、最近ではこれに基づいてイースターの時期に行われるのだそうです。「イースター」と言われてもピンとこない方が多いと思いますが「春分の日から最初に満月を迎えて、次の日曜日」だそうです。ちなみに2017年のイースターは「4月16日」でした。

 

Flecheの開催時期は「だいたいイースターあたり」といった感じ、時期的には春の訪れを感じることが出来る良い季節。タイミングが良ければゴールデンウィークに合わせて走ることもできますので、なかなか良いタイミングの催しとも言えます。

 

雪山の眺めと自転車

 

Flecheと異なる名前がつくくらいなので、各所ブルベと異なります。まず特徴的と言えるのが、一つの目的地に各所から集まるのが目的というところ。この目的地のことを「ナイスプレイス」と呼ぶのですが、ブルベでは皆が同じコースを走りゴールを目指しますが、Flecheは「かつて皆で一つところに集まったんじゃよ」という故事再現的なイベントとなっておりますので、事前に「ここ走るよー」という宣言したそれぞれのコースを走ってナイスプレイスを目指します。

 

そして「チームライド」ということ。最低3人です。途中で不慮のケースが発生し抜けてしまうケースもあると思いますがチーム員として最低3人は維持しなければなりません。

 

時間的制約としては24時間で360km走ること。22時間目から24時間目の間は25km以上走行すること、などがあります。これ以外にも細かな決まりごとがいくつかあるのですが、そのへんについてはオダックスジャパンのサイトの方をご参照下さいねっ。ざざっと書いてしまったので一部表現が適切でない所があるかもしれません。そのへんも各所、正しい出処の文献を参考にするということで。

 

http://www.audax-japan.org/Fleche.html

 

今回のチームとしては下記の方々とご一緒することになりました。

 

†ホラフキーさん ー @horaphky

 経験豊富。光の戦士(何故、光の戦士かは実車を見るとよくわかります。愛を込めて“光害”とも呼ばれたりします)

 

†ゼットさん ー  @tzr606

 経験豊富。AJたまがわ。緻密で素早い計算能力。今回のコースディレクター的存在。行く手の情報が全て頭のなかに。

 

†ごとーさん @sukerokugp02

 経験豊富。脚力魔神。山岳区間もなんのその。すいすいすーと登っていくその姿はカモシカのよう。恐るべし。

 

†アーツさん ー @Quino

 経験豊富。AJたまがわ。今回おいたんをFlecheにお誘いいただいた主犯格(ありがとうございます)。ご都合により土壇場で不参加ということに(次こそは!)

 

──えーとハイスキルな方ばっかりじゃないですか……せめて足を引っ張ることが出来るだけ少ないように段取りに力をいれるとしましょう。

 

Fleche準備編。なに持っていこうかなー(わくわく)

 

こうした長距離走行に備えての準備がすごく好きです。ある種ブルベやロングライドの醍醐味は準備にあるといえるかもしれません。これまでの反省点、周囲の方々から得た新たな知見、新たなギアのテスト、当日の天候、環境に合わせた取捨選択、脚力に応じたトレードオフ。

 

まずは数年前の甘酸っぱい記憶がいっぱい詰まったFleche(三島-京都間)を思い出してみることにしました。いくつか苦しんだ点を思い出しましたが、今現在の自分はどれほど克服できているでしょうか? ちょっと振り返ってみることにします。

 

まず「尻、手、足、肩、腰、あらゆる箇所が痛い」ということ。これは乗り込んでいたり、基礎トレーニングを日頃から積めばある程度は解消されますが、それだけでは済まない部分もまたあります。そうした部分だけにフォーカスすると「尻、手、足の痛み」については停車時にとにかくサドルから腰を降ろす、ブラケットから手を離す、両足をビンディングペダルから外す。これをまめに繰り返すだけでだいぶ緩和されます。

 

うっかり信号待ちの時間にどっかりサドルに腰を降ろし漫然と過ごさないことが大事。そんなことしなくても平気な方は全然大丈夫みたいなんですけどね……。凡人が出来る唯一の努力は創意工夫と言いますか。停車時にストレッチをすると「肩、腰」の痛みもまただいぶ緩和できます。

 

携行品を思案中。何持っていこう?

 

「グローブの中に化粧用パフを緩衝材として入れる」というテクをゼットさんから教わりました。ゼットさんもまた先駆者の方より教わったそうなのですが、これは効果絶大だそうで積極的に取り入れてみることにします。100円均一ショップで手に入る数個入りのものでよいみたい。(結論を先に述べると効果絶大どころではありませんでした。長距離走行時に手のシビレ、腫れに悩まされるライダーの皆様、これは試すべき!)

 

「周囲のペースについていけず苦しんだ」ことも反省点の一つです。これはもう「しっかり主張する」につきます。チームで走りきるのがFlecheの目的でありますので、そこは「速い」「遅い」の感覚について周囲のメンバーとしっかり感覚を共有しておくことが何よりも大事だと思いました。

 

おいたんは決して早く走れるほうではありません。ここもまたご一緒する方々との情報共有に努めつつ、また、経験豊富なメンバーなのでここについては特に心配することもありませんでした。ただ一つ「ついていけないペース」になった時は「早めにその旨主張すること」ここだけは心にしっかり留め置きました。Flecheはファストライドではなく、それぞれのチームのペースで走るのが目的でありますし、何よりもこれは「レジャー」であるのです。

 

「眠気」は最大の敵。これはつい最近まで克服できていませんでした。いまだに苦手要素ではありますが、徹底したカフェイン断ちを実践することにより一定の効果を得つつあります。普段はとにかくコーヒーを飲まない。カフェインを含むものを摂取しない。だんだんと「緑茶も紅茶もいらないや」的な心境になり、最近は水ばかり飲んでいますが、そうすることによりここ一発のナイトライド時のコーヒーが最高に旨いですし、眠気もかなりの勢いで吹っ飛びます。缶コーヒーよりもコンビニなどのその場で豆を曳いてくれるタイプのコーヒーの方が効き目が強いようです。

 

「精神的な成長」は最も大事な部分かもしれません。自らを律して、周囲にもまた気を配る。但し過度に成果を求めず、自他共に寛容な気持ちで臨むべし。おいたんはとても要領の悪い子なので何かとご迷惑をかけてしまいそうです。ただ最大限に努力はしないとですね。100点満点は狙わない。90点でも理想が高過ぎで、だいたい良くて75点でいいくらいの気持ちで走るのが良さそうです。75点が難しければ60点とれればいい。想定できるトラブルに対して対処する方法を2つ、3つ持ち合わせておくこと。

 

さてここ数回のブルベでテーマになっている「膝痛対策」も大事。漕ぎ出しで右足にググッと力を入れる癖があるようで、これはもう徹底して止めるようにしました。あと停車時にギアを1つ、2つ軽くする。当たり前なのですが疲れてくると忘れがちです。漕ぎ出しのペダルへの力の入れ加減。右にも左にも力を入れず。すすーっと進むように。

 

あともう一つ大事だったのが、GSR CUPの会場で「膝のこのへんが痛くてー」とアウローラのとんちゃいさん(@zero3hp)に相談した所「サドルをちょっと下げたらどうか」という所。そういればなんとなく半年程前にサドルを少し上げたのですが、その頃は長距離乗り込んでおらず問題が表面化していなかったという仮設が成り立ちます。サドルを上げた→ブルベに出た→膝痛い。という事象の経過にピンとくることもあり、1.5mmほどサドルを下げました。これは最終的に大正解。(いやほんと、ありがとうございます!)

 

チームライドなので、周囲に迷惑をかけないよう、いつもより装備は厚めに。防寒対策、雨対策。あまり持って行きたくない嵩張るレインパンツも持っていくことに。但し貧脚ライダーらしく不要な装備はできるだけ省いて軽量化に務めるのはいつもどおりです。今回ちょっと悩んだのは輪行時にディレイラーを外せばエンド金具はいらないんじゃないかという点ですが、疲れた状態でメカ周りを触るのはろくな結果にならないと思い、使い慣れたオーストリッチの金具を持っていくことにしました。そんな細かな軽量化の取捨選択もまた考えるのが楽しいポイント。

 

4月後半とはいえ、春先の東北は寒いので関東圏での厳冬期装備でいいと思いました。長袖インナーにジャージ、ディープウィンターシェル。足回りもレーパン、インナータイツ、アウタータイツの3枚重ね。グローブは指ぬきと防水防寒兼用のゴアテックスのオーバーグローブ。雨関連装備は全てサドルバッグにしまい、身の回りのものは背中の蛍光ベストのポケットに入れることに。

 

雨といえば、いちばん苦手なのが靴の中が濡れること。「どうしたら濡れずに済むか」という点は大きなテーマだったのですが、自転車界隈のアカシックレコードこと「CBN Bike Product Review:サイクルベース名無し」でこんな記事を見つけました。

 

http://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=3338&forum=61

 

要するにジャストサイズで適切な厚み(強度)を持つポリ袋をいい感じのビニルテープで留め、シューズカバーを被せるといい感じということみたいですが、これが周囲の方に聞いてみると結構実践者がいらっしゃって口々に「よい」という話でした。こちらの記事を知っている方もいますし、自然発生的に似たようなことをされている方もいました。これは有望と見ましたので、文献の指定するままにポリ袋と推奨メーカのビニルテープを揃え持参することに。さて雨天時の快適足元ライドは実現するのかどうか。

 

便宜上この防水法を「ポリトゥーゼ」と呼ぶことにしました。ネタ元のシリコンベースのシューズカバー「ベロトゥーゼ」は先日のブルベ時に破けてしまいましたので、今回はこっちのソリューションが頼りです。ベロトゥーゼによる防水は小一時間ほどが限界でしたが……。

 

先人の知恵、ポリトゥーゼ。こちらの写真は帰宅時のもの。バッチリ機能していました

 

好きな準備周りの話で随分と字数をつかってしまいましたので、そろそろ本題に入りたいと思います。

 

いざFlecheに出発!!

 

前日わくわくして眠れない、いわゆる「遠足前夜キッズシンドローム」ですが、今回は発症せずにまずます眠ることができました。とはいえ3時間くらい。ゴールデンウィークは何かと公私共にドタバタしておりますので仕方がないですよね。

 

目覚ましの音と共にむっくりと起床し、規則正しくウェアを身に着け、顔を洗い、歯を磨き、準備万端整えた装備一式を身に着け、見送る嫁さんに「では、遊びにいってくるねー」と伝えて朝の東京駅へ向けて出発。八重洲口でスパパッと輪行支度。

 

東京駅での輪行箇所については数カ所試しましたが、八重洲口の緑の植え込みが多い区画が立てかける場所が多いこと、人通りが多くないこと、入口から至近であることより最良であると考えます。横置きタイプの軽量輪行袋を省スペースのため縦置き出来るように整えて支度完了、新幹線に乗り込みます。

 

快適な輪行場所の確保ってとても大事ですよね

 

山形へ向かう新幹線の座席は車両の最後尾、隣席には今回のチームメイトのホラフキーさん。無事に自転車の固定場所を確保して新幹線は勢い良く走り出します。道中某国からミサイルが発射されたり何かしらあったようですが、運良く定刻通りに山形へ到着。新幹線、速いですね……北東北へのアプローチは県毎に大きく差異がありますが、中でも山形は比較的に短時間で行きやすい方だと思います。それに較べて秋田へのアクセスの悪さといったら……(スイッチバックする新幹線なんて!)

 

大船軒のハムサンドで腹ごしらえ!

 

晴天の元輪行解除、自転車を無事組み立てて一同集合。アーツさんはご都合により参加できずとのこと、残念……。光の戦士、ホラフキーさんはフロントのライト周りが圧倒的で夜が頼もしい限りですが、それだけでは飽き足らず何故かサドルバッグ後部に能面(小面)を装着。「え、どうしてそれを……」「いやー楽しいでしょ」。何やら大阪で行われた自転車イベントで周囲のお知り合い、お友達とのやり取りの経緯から「能面装着」となったらしいのですが、なんかですね、迫力ありすぎでしょ、これ。

 

嫋やかな微笑みがライダーの安全を願う!?

 

ではでは定刻になりましたので出発です。春の陽気もポカポカと、暑いくらいです。ゆるゆると走り出す一行、24時間360kmの旅はどうなるのか!?

 

24時間、360kmの旅に出発!!

山形路を往く

 

走りながら山形市街の飲食店の様子に目をやると「河北そば」の店が多い。鶏出汁、甘口醤油の冷たい蕎麦の味が記憶に蘇り、思わず「じゅるり」。走り始めて1時間も経っていないのに既にもう食べたい。やがて市街地を抜け、最初の30kmをあっという間に走り抜け村山市にある「PC1 セブンイレブン村山金谷」。

 

なんとなく胃腸の具合を整えるのに効き目があるのかなーなんてヤクルトを飲んでみました。五臓六腑に届け! カゼイ・シロタ菌!!(謎) 胃腸が弱ると補給もままならず、辛いですからね……。ブルベの時に食べるものにはすごく気を配るようになりました。一日の中で調子の波があるようで良くない時は消化の良いものに努める、良い時はしっかりと旨いものを食べるというバランスが大事のようです。

 

あっという間のPC1

 

長閑な田舎道が続くようになってくるとやがて道沿いに雄大な川の流れが現れます。最上川です。春先の山々の雪解け水を湛え、水量豊富な最上川の水の色は濃緑、トパーズ色の趣ある色合いの川と共にゆるゆると沿岸部を目指します。

 

45kmほど走り、山市、大石田町を抜けたあたりでちょっとした登り。プチ峠とでもいいますか。舟形町に入ったあたりでピーク。走行開始から2時間30分が経過しました。ここで脚力魔神ごとーさんの実力が発露。いやーかなりの斜度の坂を軽々と登っていきます、まさに豪脚。

 

ぷち峠の上でちょっぴり休憩

 

ちなみに今回のコースですが、コース設計の経緯を細かく伺っていないのですが、おそらくゼットさんのアツい想いがこもっており、とにかく登りが少ない。こちらのプチ峠も数少ない登り区間の一つでした。とはいえ、この先沿岸部の道沿いなどは細かな上げ下げがありそれなりに苦しめられるでしょう、楽なブルベ、Flecheなどないのです、いつだって。(激しく頷く)

 

五月雨をあつめて早し最上川。ちょっと五月雨には早いのだろうか。そんなことを考えつつ歩をすすめるとやがて行く手に黒い雲。「あっちいけー」「こっちくるなー」と一同願うもやがてポツポツと路面に黒い染みを作り始め「こりゃいかん」と路肩の広いスペースに避難。雨装備を整えることにしました。予報では16時頃の読みでしたが、それよりも早く14時過ぎの雨模様。仕方がないので覚悟を決めていきましょう。

 

しばらく最上川に沿って移動

 

一同装備万端、カッパフル装備。レインパンツ必携の春の冷たいやや激しい雨。全員所持していたようで事なきを得ました。おいたんも持ってき置いてよかった……。持参した「ポリトゥーゼ」も装着。「これで足元、靴内部がドライならノーベル賞ものだなー」なんて考えつつ。泥除けも全員装備済み。いやはやこのへんの装備感の足並みが整っていると気持ち良い。

 

急げ! 手際よく雨対策を (Photo: ぜっとさん)

 

じゃばばばばー、じゃばー。結構な雨量の雨ですが幸い追い風基調、一同いいペースで進みます。気力充実、順風満帆。往く手に何の障害もなし──とその瞬間、「ぷしゅるるるるー」と異音。「あれれー、葉っぱでも詰まったかな―」と呑気に漕いでいると急激に失われる推進力、そう、パンクです。水たまりの中にあったガラス片に気が付かなかった模様。ほんの小指の爪1/3程度の小さな欠片でした。

 

雨の中、修理。春雨はちと冷たいが、夜間では無いし、お友達は近くで見守ってくれているし、何の問題もありません。「ちょうど休憩にもなるしねー」と温かい言葉。ポンピングはちょっと苦労しました。そうしたことが無いようにロングゲージのポンプをつけているのですが、若干の疲れがあるのでしょうか、いつもは7barくらいさっくり入れられるのに。苦心を重ねて6.5bar。このへんで妥協することにしてライドを再開。空気圧も低めですし、以後一層路面の様子に気をつけるとしましょうー。

 

せっせと修理。濡れた手での作業はなかなか捗らない (Photo: ぜっとさん)
最上川の観光名所 白糸の滝ドライブインで天玉そば うまい!

 

パンク修理の間に雨があがり、薄墨を撒き散らしたかのような空模様がどんどんクリアブルーに。やがて連なる田園地帯の彼方に雪を湛えた堂々たる山並みが見えてきました。「おお、鳥海山!!」「すごいねー」「きれいだ!」。そして我々の行く手を祝福しているかのように山肌に虹がかかり、思わず自転車を停め撮影タイム。春の山々の勇壮さに一同心が奮い立ちます。雨はあがりましたが、路面は絶賛ウェット。ジャバジャバと足元に雨を感じながら日本海へと向けてひた進むのでした。

 

霊峰を前に一同記念写真

山形を抜け秋田へ。夜のはじまり。

 

午後遅い時間を雨の影響と共に過ごした一行はようやく日本海沿岸へ。「PC2 デイリーヤマザキ 遊佐管里」に到着し、おにぎりセットとチキンを買い込んでほくほく顔のおいたん、ゼットさんに「さて正面にある道の駅 ちょうかいに行くよー」と言われて「エエエッ」──そうでした、こちらの道の駅で何か食べたいと主張していたのはかくいう自身なのですが、そんなことはすっかり忘れて食料を買い込んでいたのでした。折しも携行食が不足気味でしたのでこれは持っていくとしましょう、何ら問題ありません。

 

道の駅ちょうかいでそれっぽい食事をしようと訪れたのですが、夕方の遅い時間ということもあり、選択肢は薄く、一同食堂へ。不漁の影響で海鮮丼の類も無しということで、ここはフライだの揚げ物類の定食でお腹を満たすことにしました。いろいろ欲を言えばキリが無いですが、暖かい場所で腰を下ろし、椅子に腰掛けて手作りの飯を食えるだけでもう気分は上々です。ミックスフライ定食を食べる元気もあり、味もよく、休憩時間を堪能。

 

のんびりを席について定食を食べる充足感といったら!

 

ここで「晩御飯はいつ食べますか―」とおいたん。一同「はあああ!?」──ふと気が付けば、18時ちょっと前に食べてるこの飯はなんだというのか、晩飯ではないのか。なんだかいつもどおりのおとぼけ発言ですが、朝早く走るブルベと違って走行時間と実時間の関係性にズレがあり、すっかり「晩めし」という気分にはなっていないおいたん、思わずポロリと言葉が出て島たのでした。「晩飯が一度とは限らない」と謎の名言が一同から飛び出し、この先「もしかしてあるかもしれない二度目」に向けて夕暮れ時の鳥海山を背に北上を再開するのでした。何が次食べられるかなぁ、この調子ならラーメンだっていけるぞ!

 

丁度良いタイミングなので雨装備をパージ。この「パージ」という言葉の響きが格好良くてやたらと使い始めると、周囲にも感染し始めたようでなんだかちょっと楽しい──雨装備をパージするのはいいですが、おっと、レーパンをパージするのはいけませんよ。えへへ。公序良俗、とても大事。

 

やがて黄昏時を迎え、日本海とご対面。鳥海ブルーラインの始点近くにある十六羅漢岩、海沿いの岩礁に掘られた仏像群の近くで記念撮影。このへんでそろそろ山形も終わり、柔らかな朱に染まる日本海を眺めつつ別れを告げて、日没あたりに秋田県入りで「にかほ市」へ。かつては仁賀保町という名前だったのですが、平成の市区町村大合併の影響で特に地方の都市名がずいぶんわかりにくくなってしまったようです。地名それぞれの字句に意味合いがあるものなので、安易にひらがな読みにしていいものだろうか、など考えつつ先に進みます。

 

夕暮れ時の十六羅漢岩近くにて
日没あたりで秋田県にかほ市へ

 

海岸沿い特有のアップダウンの多い区間で、だいぶ疲れがでてきて、ローテーションに参加できなくなってきてしまいました。ここは無理をせず、脚力のあるごとーさん、ホラフキーさん頼りで先頭を回していただくことにします。「まだまだいけるよー」「そろそろ交代しようー」「少し後ろに下がるね」コミュニケーションがバッチリ機能している安定感のあるチーム。さすが皆さん百戦錬磨の面々揃い。

 

そんな中、異彩を放っていたのが例の能面。能面を照らすための専用のバックライトが泥除け上部の備え付けられており、夜闇に赤く浮かび上がる小面。後ろに長く伸びたタイプのビッグサイズのAPIDURA サドルバッグが右に、左に揺られるたびに、小面もまたゆらり、ゆらり。幻想的な光景が眼前に広がります。「おいでー こっちへおいでー」と涅槃に誘われているような錯覚さえ覚え……これと一晩一緒に走るのでしょうか。我々の終着点が現世でありますように。幽世に往くのはまだ早いよー。

 

その様相、「夢まぼろしの如くなり」

 

だいぶ上げ下げに苦しんだ展開をしばらく続け、由利本荘市へ。ここまで来るとだいぶ秋田では都会といえるあたり。ちょっとコンビニで休憩。身体がだいぶ冷える。雨に濡れたウェア類もだいたい乾いているが僅かに湿っていて体温を奪っているようです。また小一時間ほど走って秋田市入り、羽越本線の下浜駅で休憩。こちらはほぼ無人駅。たぶんこのあたりの区間はディーゼル車が走っているので「電車」ではなく「汽車」。一同駅の待合室で作戦会議を始めます。議題は「夜をどう過ごすか?」

 

駅舎でちょっぴり作戦会議を (Photo: ぜっとさん)

 

総意としては「寝るのにコダワリすぎる訳ではないが、出来れば寝たい」。もうしばらく進んだ所に道の駅があるので、そちらを目指すことに。勇気を振り絞り寒さの増す夜の道をしばらく走り、秋田市街、マクドナルドで一旦休憩。

 

なんだか気合入りまくりの立派な内装のマクドナルドで折角なのでTV CMが多く出ていた「グランシリーズ」を頼んでみたのですが、これが旨い。マクドナルド的なハンバーガーとは一線を画するこの味わい……ちょっと待てよ、ロングライド時の疲れからの味わい補正があるかもしれない、と思いつつ「うまい、うまいよ」と食べてしまったのでした。

 

まだまだ先は長いのよ

 

マクドナルドでの思わぬ美食に恵まれた適時休憩を終え、いよいよ野営地候補の「道の駅 ことうら」へ。海沿いに別れをつけ内陸方面へと舵を取りつつ秋田市を抜け、潟上市(これも市町村合併で名前が変わった)を経て八郎潟町へ。かつて日本で2番めに大きかった湖、八郎潟の傍を走っているのですが、湖の様子はほぼ見えず。真っ暗な夜の田舎道を進みます。

 

夜が深まりつつあり、眠くなるので積極的に会話。このあたり一帯で偏愛される万能つゆ「味どうらくの里(東北醤油)」の話をする。「このへんに済む人はスーパーの特売で味どうらくの里が出ると、我先に争って買い求める」「基本的に味どうらくのことしか考えていない」「あらゆる料理に味どうらくを使う」「1.8L入りが数本手元に確保できていないと不安で仕方がない」など適当に話を盛ってテンションを上げつつ先へ進むのでした。

 

ようやく道の駅ことうらに到着。ざっくり走り始めてから16時間ほどでしょうか? 時間がハッキリしませんが深夜帯であることは確かです。恐る恐る人気の無い待合室に入ります──「あったかい。あったかいぞ!!」。人の有無にかかわらず過剰に暖房が効いているのも北国の地特有と言えるでしょうか。関東圏ではまず無い光景、過剰なおもてなしです。極めて清潔な室内は「ここでご一行は寝てくれ」と言わんばかりの広くて真っ平らなベンチ。4人が横になっても余りある大きさです。

 

快適すぎる空間に一同ざわめく (Photo: ぜっとさん)

 

「これが噂の帝国ホテル……」「帝国ホテル案件じゃー」ブルベ界隈で噂される極上の仮眠スポットを示す用語「帝国ホテル」、まさにここなんじゃないかと。走行時間の管理はコースディレクターのゼットさんが積極的に動いてくれます「1時間寝て良さそうですよー」「はーい」と一同。さっくり就寝としきます。板の間なれど、部屋暖かし。温い、温いなぁ……\ジリリリリ/ あっという間に1時間が経過。バッチリ仮眠できました。

 

缶コーヒーを飲んで、出支度を整えつつ一同会話。まだまだ笑顔いっぱい。「それにしても素晴らしい設備」と口々に褒めそやしつつ、行く手のプランを検討します。いよいよ残距離もだいぶ少なくなっており、夜を上手くやり過ごせば、なんとかなりそうです。快適で文明的な空間から勇気を振り絞り冷え込む夜の世界へ再び。いよいよライドも終盤。

 

北へ。北へ!! 夜明けを待ち望み青森へ

 

しばらく走って「PC3 ローソン能代扇田」。秋田県北部の小都市能代はこれといった街の特徴は無く、能代工業のバスケットボールが強いことが有名なくらい。静かな田舎町の夜更け。ホラフキーさんが道中ネタ振りしていた「味どうらくの里」が入ったおにぎりを食べていたのを発見。あぁ、おいたんもこれを食べるべきだった……。

 

ここから徐々に山間区に差し掛かり、ゆるゆると徐々に登り基調の展開に4時過ぎあたりから空が少し明るくなってくる。ややペース落ちるが気にしない。ゼットさんがしっかり計算してくれているし、大丈夫。ごとーさんの豪脚も快調、ホラフキーさんの能面も快調!? やがて日が昇り、活力も戻る。ペースもあがって「よし、走るぞー!!」

 

ルートプランとしては22時間目の時点でPC4である「やたて峠」のピークにいたいのですが、これは22時間目以降のルールを下り基調で過ごす作戦。これを失敗すると峠区間をある程度気合で登ることになるのですが、まぁやれないことはない感じの一行ですが、どれだけの疲労が残っているかも知れずリスクは避けたい。そんなわけでペースアップ。濃い朝もやの立ち込める中勢い良く進む。徐々にアップダウンがキツくなるが、皆体力気力十分のようで特に問題もなし。

 

登り区間を淡々と

 

道の駅ふたついをパスし、次の道の駅たかのすで小休憩。297km地点。残りざっくり60km。恐れていた登り区間はそれほど険しくく。最後の微妙な時間帯に合わせペースコントロールするゼットさんに合わせ走るチーム一同。そして丁度良いタイミングでやたて峠に到着。22時間到達となる証の記念撮影。合わせて係員さんにブルベカードにメモをしていただく。(こういうのもありなのねー)

 

登りきったー!! やたて峠に到着
勇壮な岩木山
ラストスパート!! 弘前市へ

 

弘前市街に入るとなかなかの交通量、弘前城の桜見学の観光客が多いようでい慎重に走ることしばし、ゴールの弘前城前に到着。城のお堀に沿って一面の桜!! 「ああ、絶景カナー」無事に目的地に辿り着きました。走りきった余韻を分かち合い、そしてゼットさんはこのままナイスプレイスの北海道・札幌へと空路移動。諸々都合上、ナイスプレイスまで行けない残り3名はそれぞれの帰路へつくこととなりました。

 

見事な桜の弘前城址

 

やりきった感があり、特に弘前観光という考えもなく、翌日からはお仕事ですし、お楽しみとしてはもう十分。方面の同じホラフキーさんと往路と同様ご一緒しつつ、荷物整理して鈍行に乗り、新青森駅へ。そして東北新幹線で東京駅まで、これまた自転車での道のり感でいくとあっという間。途中でお弁当食べたり、うつらうつらとしていたらもう東京といった感じでした。

 

今回のFlecheを振り返ってみると、それぞれが役割を自主的に理解してこなす。良いチームでした。終始笑顔で、24時間何事もなく一緒に走れるって凄い。未熟なおいたんからすると経験値の高いメンバーに支えられた24時間でしたが、いろいろと学びが多い、得難い体験となりました。周囲を思いやりながら走れる脚力、緻密なプランニング、小トラブルへの対処、手際の良さ、ロングライドに備えた装備、ノウハウの数々。なかなか難しいことが多いと聞くFlecheですが、終始楽しい思い出がいっぱい詰まった最高のお出かけでした。またFlecheを走りたいな!!

 

ゼットさんは札幌のナイスプレイスへ
またFlecheへ!! (Photo: ぜっとさん)

 

……そんな訳で楽しい思い出がいっぱいのFlecheでした。もしこのブログを最後までお読みになられましたら「読んだよー」的な意味合いで中の人(@honeybear360)にリプとかふぁぼとかRTとかいただけますと小躍りして喜びます。